御岳ひぐらし日記

フェリーグライドインストラクターの工藤が、カヤックのこと、ツーリングのこと、御岳渓谷の日々の出来事、奥多摩の観光情報などを綴ります。

カヤックを傾ける(前傾と後傾)

前回はカヤックを左右に傾けるリーンの説明をしたので今回は前傾と後傾の説明をします。

全長の短いプレイボートはバウ(前方)やスターン(後方)を水の中に入れて縦の回転も横の回転も自由自在に出来るカヤックですが、普通のダウンリバーカヤック(全長250cmぐらいから350cmぐらい)は前傾して前に重心を移しても、後傾して後ろに重心を移しても外見上はカヤックが前後に大きく傾くほどの変化はありません。

ですがカヤックの動きには大きな影響が出ますので、フラットと前傾、後傾を使い分けるとよりカヤックをスムースに滑らせることが出来るようになります。

①前傾を使う場面

まずは前傾、ちょっと増水した川でエディーラインを突破する時やストッパーを突破する時等、しっかり前傾して前重心にした上でスピードを付けて、障害物を一気に突破します。

後傾した上にスピードがないと、バウが障害物に当たった時に大きく減速させられバランスを崩してひっくり返ってしまうこともあります。

もう一つ前傾することの大きなメリットは、カヤック+身体の重心を下げることが出来ることです。

重心の高い船は復元力が弱くある程度傾くとひっくり返ってしまいますが、重心の低い船はかなり傾いても復元力で戻ってきます。

初心者が、岩にぶつかりそうになった時無駄な抵抗をすると却ってバランスを崩して沈してしまうので、「思いっきり前傾して無抵抗」って思わず叫んでしまいます。

沈する確率は明らかに減りますね。

②後傾を使う場面

後傾は前傾よりもちょっと難しいです。

初心者にはまだあまりイメージがわかないかもしれませんが、こんなシチュエーションで後傾を使います。

漕ぎ登りでちょっと段差を上がる時、バウが斜面に突っ込むと押し戻されてしまうので、ほんの少しバウを上げます。

ストリームアウト時やストッパーを突破する時も、障害物を切り裂くように突破するのではなく、乗り越えて障害物の上に着地するような通過方法もあります。

後傾を使い時の注意点

後傾気味の動作をしたときバウが強い流れを受けて急に前方に持っていかれると、腸腰筋が伸びきった状態になってしまいます。

一度この状態になるとアスリートならともかくも一般人はもとに戻せずカヤックがコントロール不能状態になってしまい最悪はバランスを立て直すことが出来ずに沈してしまいます。

後傾は単に頭を後方に倒すのではなく膝でカヤックを押さえた上で腸腰筋と腹筋で調整しながら頭を後ろに反らすことによりバウを上げる動作です。

後傾した後、いつでも自由にまたフラットや前傾に戻せなくてはいけません。

体幹の筋力が強くないとなかなかコントロールが難しいです。まずは体幹の筋力アップに励みましょう。

次回はいよいよパドルの操作方法を。まずはフォワードストロークから。

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