60代からのリバーカヤック ➁リバーカヤックを漕ぐのに必要な体力と身体能力
リバーカヤックを漕ぐのに必要な体力と身体能力はリバーカヤックの種類によって異なりますので、少し詳しくご説明いたします。
まず、カヤックスクール等て開催するカヤック体験ツアーに参加される場合についてご説明いたします。
通常、カヤック体験ツアー等ではカヤックを乗り降りする場所までの艇の運搬は業者のスタッフが行います。重いカヤックを運ぶ力がなくても大丈夫です。湖などの静水でのんびり漕ぐだけなら転覆する確率は低いですが、万が一転覆した場合は岸まで泳がなくてはいけません。転覆したカヤックに再び乗り込むことは通常かなり困難です。ライフジャケットを装着すれば必ず浮かびますので溺れる心配はありませんが、ライフジャケットを着けた状態で岸まで泳げる体力が必要です。泳げない人でも必ず浮かぶので手足をバタバタさせればゆっくり進みます。水を過度に怖がる人にはちょっと厳しいかもしれません。
のんびり漕ぐだけならさほど力は使いませんので、60代、70代の方でも元気な方なら全然問題なく漕げるでしょう。ですが、腰痛持ちの方は漕いでいるうちに腰が痛くなってくるかもしれません。リバーカヤックは長座(がに股で体育座り)の姿勢を維持しながら漕ぐので慣れない方が長時間漕ぐと、足腰に負担がかかります。
次に、自分でリバーカヤックを所有して漕ぐことを前提に、必要な体力と身体能力について説明します。
①カヤックを運ぶ力
車でカヤックを運んだとしても駐車場から川岸や湖岸までのアプローチは自分の力でカヤックを担いで運ばなくてはなりません。急流をダウンリバーする場合は川岸の岩場を重いカヤックを担ぎながら歩きます。漕ぐよりもカヤックを運ぶ方が体力を使うことが多いです。ですので、カヤックの重さはとても重要です。湖岸までキャリアに載せて運べるような場所で漕ぐのであれば大丈夫ですが。
ちなみに軽い順に、①パックラフト(3kg程度)➁スラローム艇(9kg程度)③フリースタールカヤック(11kg程度)④レクリエーショナルカヤック、フォールディングカヤック、ダッキー、ホワイトウォーターカヤック(種類により異なるが概ね20kg前後)っていう感じです。
➁泳力
急流下りに挑戦するなら頻繁に転覆することがあるでしょう。転覆した後、岸までカヤックを運びながら泳がなくてはなりません。こればとても体力が必要な作業です。パドリングスキルが上がると無駄な動きをしなくなるので、漕いでいる間はさほど体力を使いませんが、1度転覆して泳ぐと1時間漕いだ分ぐらい体力を消耗します。急流を力強く岸まで泳ぐ泳力は残念ながら年を重ねるとともに急速に衰えますので、過信は禁物です。
③体重(体型)
体力と身体能力には直接関係ありませんが、体重は漕ぎにとても大きな影響を与えます。カヤックは小さいですが「船」です。転覆のしやすさ、し難さは、浮力の大きさがとても影響します。小さい子供が大人用のカヤックに乗ると、浮力が大きくなるので自らひっくり返そうとしてもなかなか転覆しませんが、体重の重い人が乗ると、転覆するか、しないかの限界点が低くなるので、ちょっとバランスを崩すとあっという間に転覆します。
また、お腹周りにたっぷり脂肪の塊があって前傾の姿勢を取りづらい人は、どうしても後傾の姿勢で漕ぎがちです。後傾姿勢で腸腰筋が伸びきってしまうと、バランスを崩したときに対処できずに簡単に転覆します。
パックラフト、ダッキー、レクリエーショナルカヤック、フォールディングカヤックなど比較的安定感のあるカヤックでのんびり漕ぐ分にはさほど問題ありませんが、本格的なホワイトウォーターカヤック、フリースタイルカヤック、スラローム艇に挑戦した方でメタボ気味の方は、あらかじめある程度身体を絞ってから挑戦して下さい。
④反射神経
反射神経は残念ながら年齢を重ねるに従って急速に衰えます。恐らく年齢を重ねるとともに安全と危険との境目ぐらいの動作をあまりしなくなるので、反射神経を鍛える機会がなくなってしまうのが影響するのでしょう。
リバーカヤックも湖やのんびりした川を下るだけなら、一瞬の判断が必要になる場面はありませんので、反射神経の良し悪しはさほど問題になりませんが、急流を岩の避けながら下る本格的なホワイトウォーターのステージでは一瞬の判断ミスで簡単に転覆します。バランスを取る動作もパドリングも絶妙なタイミングで行うためには反射神経がとても大切です。更に難しいのは丁度よい力強さで漕ぐ必要があり、過剰反応はカヤックの挙動を却って乱してしまいます。
年を重ねてもいつまでも機敏に動き続けたいですね。本格的なリバーカヤックは反射神経に磨きをかけるためのとてもいいトレーニングになりますよ。
⑤バランス力
リバーカヤックは水の上に浮かぶ船ですので、安定感抜群の乗り物ではありません。ですが、湖やゆったりした川で漕ぐ分にはパックラフト、ダッキー、レクリエーショナルカヤック、フォールディングカヤックはシビアなバランス力を要求されることはないでしょう。
ホワイトウォーターカヤック、フリースタイルカヤック、スラローム艇はカヤック自体があまり安定性がありません。さらに激流を漕ぐために自らの意志でカヤックを傾けたり様々な動作を行います。カヤックの中心に重い頭が常にある状態で漕ぐことを意識します。頭がカヤックの中心からずれると、バランスを崩してカヤックは不安定になります。大きくバランスを崩す前に気が付いてすぐ対処できる能力に優れていると、急流でも安全に余裕を持って下ることが出来ます。
⑥身体の柔軟性
ホワイトウォーターカヤック、フリースタイルカヤック、スラローム艇に乗る人はシビアにカヤックをコントロールする必要があり、身体の柔軟性も要求されます。
カヤックがバランスを崩しそうになった時でも脇腹の筋肉が柔らかい人は頭をカヤックの中心に戻そうとすれば転覆を免れるでしょう。でも身体の硬い人は頭が一定以上カヤックの中心からずれるとそのまま転覆してしまいます。筋力が強い、弱いではなく柔軟性があるかないかによって、バランスを崩さずにカヤックを傾けられる限度も決まります。
転覆した時にカヤックを起こすエスキモーロールの動作も身体が硬くて前傾が苦手な方には難しいです。
身体が硬い人はまずは陸上でしっかりストレッチして身体の柔軟性を取り戻しましょう。身体の柔軟性は短期間で劇的に向上するものではありませんが、数カ月、数年単位でトレーニングを続けると、50代、60代でも身体は確実に柔らかくなります。日常生活の階段の上り下りやちょっとした動作でも股関節回りや体幹の柔軟性が増すとバランスを崩さなくなり、無駄な力が要らなくなりますよ。
60代、70代でリバーカヤックを漕ぎに来られる方は皆さんとても元気で筋力や持久力が不足していると感じる方はほとんどいません。でも、ちょっと無駄な脂肪が付きすぎている方や身体の柔軟性が無くなっている方は結構多い印象です。リバーカヤックが上手になりたいと思うと、自然とウエイトコントロールに気をつけるようになったり、ストレッチも毎日するようになったり健康な生活習慣が身に付くのではないかと思います。
最後に、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の方は長座の姿勢を長い時間キープして漕ぐリバーカヤックはちょっと辛いかもしれません。私も腰椎と頸椎のヘルニア持ちでごまかしながら漕いでいるますが、重いカヤックを沢山運び、連日漕いで疲れがたまると腿からふくらはぎにかけて痺れが出て、長い距離歩くのが辛くなることがあります。身体の柔軟性を身に着けるためにストレッチで体幹回りの柔軟性が出てくると却ってヘルニアの部分の神経を圧迫してしまうのか、身体が整ってくると痺れも出やすくなり苦労しています。
フェリーグライドのカヤック体験・スクール
カヤック体験は、初めての方でも安心の湖での初心者向けカヤック体験です。
カヤックを「もっと上手に漕げるようになりたい」方にお勧めの、カヤックスクール。
流れのある川を安全に漕げる様になるためのダウンリバーコース。
スラローム技術を習得するための初級スラロームコースがあります。