御岳ひぐらし日記

フェリーグライドインストラクターの工藤が、カヤックのこと、ツーリングのこと、御岳渓谷の日々の出来事、奥多摩の観光情報などを綴ります。

キャッチ

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カヤックを素早く方向転換するためのパドル操作です。

昔のカヌーの本では「ハイテレマークターン」って呼ばれていた動作です。

私が習ったカヤックスクールでは「キャッチ」と呼んでいたのでその名前を使わせて頂きます。

名称は特にこだわりません。効果的に使えればよいですから。

①キャッチでカヤックが回転する原理

このパドル操作が効くための要素は大きく分けて2つ。

その1:カヤックと水との流速差

フォワードストロークでカヤックにスピードをつけた後、カヤックの脇にサクッとパドル(ブレード)を刺したとしましょう。

そうするとカヤックはまだ真直ぐ進みたいのに刺したパドルがブレーキになってしまい、行き場がなくなった真直ぐ進む慣性はパドルを中心に回転し始めるのです。

真直ぐ走りながらポールを掴むと掴んだポールの回りを身体がぐるっと回っちゃうのと同じ理屈です。

その2:体幹の捻り

カヤックを両膝でしっかり抑えて漕ぐとカヤックの向きと足(下半身)の向きは同じになりますね。

上半身を思いっきり捻ってからパドルを刺したとしましょう。

上半身が思いっきりねじられているので、ゼンマイを巻いた状態と同じです。

パドルがしっかり水を捉えていると抵抗が大きいのでパドルを基点として足にくっ付いているカヤックが先に捻った上半身の方向に勢いよく回ります。

キャッチによるカヤックの動きは、「その1」と「その2」の合わせ技の結果なのです。

では合理的な動作を説明します。

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②キャッチの動作のポイント

(1)目線はこれから行きたい方向をしっかりと見る

(2)上手の甲をおでこに付けて上手側の肩を前に出す

私は肩を出す意識をすると体幹が自然に捻れると感じています。

(3)キャッチパドルはブレードの首のところまで水に入れる

水をしっかり掴むことでキャッチがよく効きます。また遠心力に対抗するための支えになるブレードが水から抜けるのを防げます。

キャッチする肘は畳んで胴体のすぐ脇に

肘を後ろに引かない。肘を曲げすぎない

いずれも初心者にありがちなポーズですが、ブレードがしっかりと水を掴めないのでキャッチの効きが悪くなります。

少し前傾して両膝の内側でカヤックをしっかりと抑える

この時、ほんの少しだけ上手側の膝を持ち上げて回転する側にリーンします。この姿勢を安定して保つと回り始めたカヤックは惰性で綺麗に回り続けます。

ラダーのポーズとキャッチのポーズはほぼ同じ

ラダーのポーズからそのまま上半身を捻るとキャッチのポーズになります。

遠心力には重力と体幹の筋肉で対抗する

キャッチパドルでカヤックが回転し始めると、かなり強い遠心力がかかります。

キャッチパドルを水にしっかり差して大きな抵抗(支え)を作ることと、ほんのちょっと内傾することによって頭を重心の内側に移動させることにより重力を遠心力に対抗させて安定を保つことが出来るのです。

猛スピードで漕いだ後いきなりガツッとキャッチすると、凄い勢いで遠心力がかかるので、思わず外傾してキャッチパドルが水から出てしまうことがありますね。

そうすると遠心力に対抗する支えまでなくなってしまうので、外側へアッという間に沈してしまいます。

パドルをしっかり水の中に入れると支えが出来るので、体幹の筋肉を踏ん張ることにより遠心力に対抗できます。

腸腰筋の力が抜けて、外側に後傾しないように前傾と膝の抑えの準備をしっかりするとカヤックが安定します。

アスリートではないスラローマー方々にアドバイス

遠心力で勝手に外傾側にカヤックが傾くので無理に外傾させてスターンカットする必要は全くありません。

それよりも艇がグラグラしないようにしっかりと膝の内側で抑える意識が大事です。

キャッチ動作の前にスィープを必ず入れる癖のある人が多いですが、キャッチの回る原理とスィープでカヤックが回る原理は別のものです。

繰り返し言いますが、キャッチで回る原理は真直ぐ行きたい力に対してキャッチパドルが入るので行き場のなくなった直進力が急激に回転力に変わることです。

スィープで回り始めたカヤックに対してキャッチパドルは抵抗になることすらありますよ。

かといって、キャッチする逆側に回転慣性が付いているカヤックをキャッチで無理やり回すと肘や手首に大きな負担が掛かって故障の原因になります。

ほんの少しだけこれから回したい方に回転慣性が付いている状態でキャッチすると、抵抗も少なくカヤックも気持ちよく回ってくれます。

この按配は沢山練習して身に付けて下さい。

キャッチの直前のパドルは、キャッチする側をパドルを立ててなるべく回転が付かないようにフォワードストロークする場合もありますし、キャッチする反対側のパドルをフォワードストロークする場合もあります。

今のスラローム艇は素人でも理屈さえ掴めば全く力を入れないで自由自在にスターンカット出来ちゃいます。

いい時代になりましたね。これ以上のコツは初級スラロームコースで伝授致します。

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