御岳ひぐらし日記

フェリーグライドインストラクターの工藤が、カヤックのこと、ツーリングのこと、御岳渓谷の日々の出来事、奥多摩の観光情報などを綴ります。

番外編 体幹の捻りで漕ぐ(1)

「カヤックは手だけで漕ぐのではなく体幹の捻りを使って漕がなくちゃ」ってよく言われますね。

体幹のありとあらゆる筋肉を駆使して漕げれば手の筋肉だけで漕ぐよりも大きな力が出るし、疲れません。

ちょっとマニアックになりますが、今回は上半身(肩のライン)と下半身(骨盤のライン)の向きねじれに着目して話をさせて頂きます。

漕ぐ側の足の踏ん張り

フォワードストロークの漕ぎ方を教わる時、「漕ぐ方の足を踏ん張りながら上手をパンチして」って言われませんでしたか?

カヤックを始めた頃私もそう教わって、体幹の捻りで漕ぐんだって意識しながら必死で足を踏ん張って漕いでいました。

ここで一つ質問です。この漕ぐ足を踏むという動作は何のために行うのでしょう。

「足を踏ん張って艇を前に進めるため」って答える人がたまにいますが、果たして本当でしょうか。

静水で足をストレッチャーに乗せた状態から強く踏ん張ってみて下さい。カヤックは微動だにしませんね。

更に強く踏ん張ったらストレッチャーは壊れてしまうかもしれませんが、カヤックを前に進める運動エネルギーは生み出していないのです。

では、何のためにストレッチャーを踏ん張るのか?

その答えは「ストレッチャーを踏ん張った側の下半身(骨盤のライン)を後ろに下げるため」って言われてもあまりピンときませんね。

上半身を大きく捻って、下半身は捻らない(若しくは少し逆に捻る)と上半身と下半身の向きのずれは大きなエネルギーを貯め込み、その反発力でカヤックは勢いよく回転するのです。

この捻りによるエネルギーを貯め込むために漕ぎ足の踏ん張りが必要になるのです。

だから必要以上に強く踏ん張ることはないのです。

スィープを漕ぐ時の上半身と下半身の位置関係

スィープでカヤックを回転させる動作は分かりやすいので、まずはスィープの動作で上半身と下半身の位置関係を説明します。

お尻を軸にその場で回転させるスィープで試してみましょう。

DSCN5308

①回したい方に目線を向けて上半身も思いっきり捻ります。

②漕ぎ手は肩のラインの鉛直線上にしっかり手を伸ばします。

③思いっきり上半身を捻ればブレードはバウのすぐそば(バウ先が12時として1時ぐらい)に入ります。

④ブレードは水面に対して直角に、全部水中に入れて水をしっかりキャッチします。

⑤スィープストロークを始める前から漕ぐ方の足を踏ん張って、漕ぐ方の下半身のラインが上半身に引きずられて前方に行かないようにします。

腰から胸にかけての筋肉が思いっきりねじられて、大きな反発力を貯めこんでいる状態です。

ブレードは水をしっかり掴んでいるのでほとんど動きませんが、下半身が上半身と同じ向きに戻ろうとする力で、足と密着しているカヤックの方が勢いよく回転するでしょう。

この時、漕ぐ側の足を踏み込まないと、上半身の捻りにつられて下半身も漕ぐ側が前方に出るために、上半身と下半身との位置関係のずれの差が少なくなり、回転力が弱まってしまうのです。

ちなみスィープパドルが3時の方向まで動くと上半身と下半身の向きが一緒になります。ここで漕ぐ側の足の踏み込みは終わりにします。

そこから更にスターンまでスィープしながら上半身を後方に捻る時に下半身も後方に回ると、上半身の捻り込みの力が減ってしまい回転が鈍くなってしまうからです。

言葉と図だけの説明では完全に理解するのは難しいかもしれませんが、上半身と下半身の位置関係で力のためを作り、ためを開放して大きな回転力とするイメージがなんとなくつかめたら結構です。

次回はフォワードストローク時の捻りの活用について説明します。

スィープストロークと同じ要領で漕ぐとカヤックが回転し過ぎて効率よく真直ぐ進みませんので、スィープストロークとはちょっと異なった意識で漕ぐ必要があります。

フェリーグライドのカヤック体験・スクール

カヤック体験は、初めての方でも安心湖での初心者向けカヤック体験です。

カヤックを「もっと上手に漕げるようになりたい」方にお勧めの、カヤックスクール
流れのある川を安全に漕げる様になるためのダウンリバーコース
スラローム技術を習得するための初級スラロームコースがあります。

カヤック技術編 』カテゴリの最新記事

番外編 体幹の捻りで漕ぐ(2)

今回はフォワードストロークを漕ぐ時の体幹の捻りについて説明します。体幹に捻りで漕ぐ(1)でも述べたように、フォワードストロークを漕ぐ時は漕...

番外編 体幹の捻りで漕ぐ(1)

「カヤックは手だけで漕ぐのではなく体幹の捻りを使って漕がなくちゃ」ってよく言われますね。体幹のありとあらゆる筋肉を駆使して漕げれば手の筋肉...

ダウンリバー⑩(岩を避ける)

本流の強い流れの真ん中に大きな岩があり、流れが岩に激突していることが多々あります。岩が水面下ギリギリの位置にある場合、気が付かずに漕ぎ進め...

ダウンリバー⑨(流れと流れの合流地点)

本流に支流の川が合流する場所や、岩によって一度分けられた流れが再び合流する場所はとても不安定なエリアが暫く続きます。強い流れ(本流)に対し...

ダウンリバー⑧(シュートの漕ぎ方)

今回はシュートの漕ぎ方について説明します。①シュートは何故出来る?川幅の広いところから急激に川幅が狭くなると左右から川の中心に向かう流れ...

ダウンリバー⑦(ストッパーの突破方法(2))

今回はストッパーを突破する漕ぎ方について説明します。但し、無駄な労力を使わずに安全に川下りするためには、避けるラインがあるのであればストッ...

ダウンリバー⑥(ストッパーの突破方法(1))

今回はストッパー(ホール)について説明します。フェリーグライドでは御嶽渓谷程度の川幅のある川をダウンリバーすることを前提としてカヤック技術...

ダウンリバー⑤(ウェーブの漕ぎ方)

ダウンリバー⑤(ウェーブの漕ぎ方)今回はウェーブ(立ち波)の突破方法について説明します。ウェーブと一概に言ってもその大きさや形状は様々な...